僕が野鳥に興味を持ったきっかけは、息子が拾ってきた一羽の野鳥の雛からです。 数年前の春のことでした。 我が家では、以前、スズメの雛を育てたことがあります。雨戸の戸袋に巣があってピーピーと賑やかな鳴き声が聞こえていました。ある日、その一羽が巣から落ちて庭でうずくまって居たものを育てたのです。黄色の唇を大きくあけ、手に乗って餌を欲しがる仕草が可愛らしく………良くなつきました。 スズメは雑食性ですから、専用の小鳥の餌以外にも、飯粒や、うどんなど色々な物を食べました。牛乳も飲みました。【ツバクロスズメ】(笑)という名前を付け、巣立ちもさせ、立派な親鳥に成長させたのですが、ふとした拍子に窓から飛び立って行ってしまいました。 息子が拾った野鳥の雛、今度も大きく育ててやろうと、家族全員に気合が入ります。わらの巣籠、ケージ、餌さを口に入れる道具、水のみ場………使えるものはスズメのお古を引っ張り出し、不足のものは直ぐに買いました。寒さで震えていたのでホッカイロも置いてやりました。暖かくて気持ちが良いのか、その上でうずくまって、じっとしています。時々、ピピッー、ピピッーと弱々しく鳴きます。 鳥の種類を調べました。脚が長く、水掻きが有ります。羽の模様、嘴の大きさ、形、脚の特徴などから、どうやらチドリの仲間のコチドリのようです。水鳥がどうして名張の山の中に巣作りなんかしたのでしょうか。家から1Km位の所に青蓮寺湖(ダム湖)が有ります。そこから山間の町にしては、わりと川幅の広い名張川が流れ出ています。小石の河原も草むらも見られます。野鳥達の棲息地としての条件は十分でしょう。その場所で雛が見つかるのならまだしも、息子が雛を見つけた場所は近所の通学路で、水辺からはほど遠い距離です。
推測ですが、最近のルアーフィッシングブームで多くの人々がダム湖周辺を動き回るため、野鳥達は子育ての場所を追われてしまったのでしょうか。本来、水辺で棲息する鳥が難を逃れ、山の中に巣を作り雛を育てる。これほど哀しいことはないでしょう。 スズメの場合と違って、餌が判りません。買って来た2種類(粉と粒)の餌を口に入れてやるのですが吐き出してしまいます。鳥の図鑑を調べても具体的な事は載っていません。野鳥だから昆虫や青虫を食べるのかしらと、庭で取った虫を与えても駄目でした。粉餌を牛乳で練って見ましたが、やはり食べてくれません。我が家で出来ることは水を無理やり口に流し込んでやるくらいで、雛は目に見えて弱って行きます。ペットショップに相談してみましたが良いアイディアは出ませんでした。 とうとう、その雛は3日間だけ生きて、死んでしまいました。結局、人間の与えた餌も、水一滴さえも口にはしませんでした。どんなに小さな生き物でも、野生の厳しさを備えているものなのか・・・・・・、何やら深く考えさせられた雛の最後でした、死にざまでした。 かわいそうなことをしました。二日目に、どうも様子が芳しくないので、巣に戻そうと、拾った場所の付近を探しましたが、巣は見つかりませんでした。たとえ巣が見つかったとしても、野生の生き物は一度でも人間が触れた子を育てようとしないらしいことを聞いていました。人間に拾われた雛の末路は如何(いかん)ともし難い結果になったでしょう。我々には到底入りこむことが出来ない、大袈裟にいえば自然の、野生の営みの神秘に触れたような心持のする体験でした。雛を一生懸命に世話をした家族にとっても貴重な経験でした。 以来、野鳥のことが身近に思えるようになりました。散歩や、山登りの道すがら、野鳥の囀りが聞こえると足を止めて彼らの姿を探すようになりました。そして、少しづつですが野鳥の勉強をしてみようと野鳥の会に参加しました。偶然、見かける小鳥達の名前や鳴き声のことなどを話題にして歩く山旅ができたなら、その旅はどれほど豊かなことでしょう。探鳥の集いなどへも参加してみようと考えています。 この先、野鳥達とどんな出会があろうとも、僕の手のひらの上で細い脚をカサコソ動かしていた雛のことは決して忘れないでしょう。野鳥に対する心持ちの原点として、長く記憶にとどめておきたいできごとでした。 記)2000年2月6日 |
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